« 夢色学園生徒会実践記 ~すももラッシュ~ | トップページ | 夜明け前より瑠璃色なSS 左門 de アルバイト »

2008年2月 9日 (土)

夜明け前より瑠璃色なSS エステルさんのナントカ第2回

引き続き、エステルさんのバレンタインSSをお楽しみください。

前回のSSを読んでおくと、よりお楽しみいただけます、たぶん。


~エステルさん誕生日記念&バレンタインSS~


「あれ、もしかしてエステルさんですか?」
店を出たところで声をかけられる。
私がそっちを振り向くと、
「あ、やっぱりそうだ。こんにちは、エステルさん」
笑顔で話しかけてくる女の子。朝霧さんの同級生の遠山翠さんだった。
朝霧さんが月側の人間、つまり私たちの側で活躍したのだとすると遠山さんは
地球側の人々のまとめをしてくれた人物である。
彼女も朝霧さんと同様、好感を持っている地球人の一人だった。
「こんにちは、遠山さん」
私も軽く頭を下げた。


「うわ、やっぱバレンタイン前の休日はすごいなぁ」
先ほどの人だかりを目にした遠山さんもため息をついた。
「遠山さんもチョコレートを買いに来たんですか?」
「『遠山さんも』ってことはエステルさんもですか?」
逆に聞き返されてしまった。
「いえ、私はバレンタインがどういったものか、と様子を見に来たのですが……」
人だかりにちらりと目をやる。
「あはは~、そうですね~」
鬼気迫る人だかりをみて遠山さんも苦笑い。
私がその輪に加われない事を察したのだろう。
「あ、じゃぁもう少し落ち着いた店に案内しますよ」
そう提案する遠山さん。
「え、でもそれでは……」
「いいですから、私もそっちで買うことにしますから」
遠山さんが言うには、あの店は駅前にあるのがいけないとかどうとか。
確かに多くの人が通りかかる場所なので集客力があるのだろう。
私は遠山さんに表通りから少し離れた店に案内された。


落ち着いた雰囲気の洋菓子店。客付きは向こうほどではないにせよ少なくはない。
「ここってちょっとお値段が張りますけど、結構な穴場なんですよ」
楽しそうに話す遠山さん。
店頭には小奇麗にラッピングされたチョコレートが数種類並べられており、
既製品と手作り用でも分けられている。
当初はもっと多くのチョコがあったのだろう。いくつかの品には売り切れの文字があった。
「あ、私は買っちゃいますけどエステルさんはどうしますか?」
「いえ、私はもう少し考えてから」

「じゃごめんなさい、ちょっと待っててくださいね」
『ちょっと』と言った割には何度も商品とにらめっこする遠山さん。
結局、彼女が買い終えるまで30分ほどかかった。

その間、駅前ほどではないがやはり何人もの女性がチョコレートを買っていった。
ここで気になる事があった。一人の女性が、いくつものチョコレートを買っていくのである。
それも一人じゃない、見ていただけでも半数以上の女性がいくつもチョコレートを買っていった。
少し高価なこともあり、私は結局手を出せずにいた。


ようやくチョコが決まったのか満足げな遠山さん。
私が何も買っていないことに気が付くと
「ところでエステルさんって、誰かにチョコをあげたりしないんですか?」
と聞いてきた。
「いえ、このバレンタインという行事がどういうものか良く分からなくて」
「あ、なるほど。だからさっき『様子を見に来た』って言ってたんですね。納得納得」
ふむふむ、と頷いていたかと思うと顔を上げ
「じゃぁ地球を代表して簡単に説明させていただきます」
言うが早いか遠山さんは店内にあるテーブル席を陣取った。
「え、でもそんな手間を取らせるわけには」
「別に手間じゃないですってば。それともこの後、忙しいですか?」
「いえ、特にそういうわけでは」
夕飯まではまだ時間があるし、もし来客があったとしてもモーリッツ様が
礼拝堂に残っているので問題はない。
「じゃぁ、少し付き合ってくださいよ。あ、すいませ~ん、注文いいですか~」
走り出したら止まらない遠山さん。私は観念して椅子に腰を下ろした。


「ま、簡単に言うと女の子が男の子にチョコレートをあげる日、なんですよ」
注文した紅茶とクッキーが届くと遠山さんが切り出した。
「えぇ、その辺のことは伺いました。ただ……どういった関係の方に渡せば良いのでしょうか」
先日、私が疑問に思ったことを口にする。
「好きな人にあげる場合と、そうでない場合と2パターンあるんですけど……」
いわゆる、女の子から男の子に想いを告げる意味を込めて渡すチョコ。
『本命チョコ』というらしいのだが、それが本来のバレンタインの意味らしい。
しかしそれ以外に、お世話になっている方、例えば学校の男性教師などや
仲の良い友人に対して渡す『義理チョコ』というものが存在するらしい。


「でも、一方的にあげるだけだと、女性の方が立場が弱い気がしますね」
私は率直な感想を口にした。
女性側から物を提供している、と考えられなくもない。
「あ、それは大丈夫です。来月の14日にホワイトデーというのがありまして」
「ほ、ほわいとでー?」
更に知らない単語まで出てきて、オウム返しの私。
「そっか、それもご存知ないんですね。じゃぁそれも説明しますね」
ホワイトデーの説明を聞くと、今度は逆に女性が押し付けがましく見えてくる。
一通りの説明を聞いたが、やっぱりよく分からない風習だった。


「それで、遠山さんは誰にあげるのですか?」
さっき買っていたチョコレートについて聞いてみることにする。
「私ですか?とりあえず部活の顧問の先生と、朝霧君かな」
遠山さんは隠すことなく答えてくれた。
「朝霧さんに渡すのですか?」
先生はともかく、ここで朝霧さんの名前だけが出てくるのが不思議だった。
「え?いや、なんてゆーか」
すると私の質問に遠山さんが慌て始めた。
「ほら、朝霧君っていつも良く話したりするし。その変な意味はないってゆーか」
視線をさまよわせる。心なしか顔も赤い。
「あ、ご、ごめんなさい」
義理チョコの方に考えをとらわれていて、もう一つの意味のチョコを失念していた。
そうか、遠山さんは朝霧さんに想いを伝えるために。
「え!?いや、その。そういう意味じゃなくて。義理、そう義理ですってば」
私が意味に気付いたことを察したのだろう、わたわたと両手を振る遠山さん。
否定する顔がますます赤くなっている。
そこまで慌てていては説得力も何もない。
「いや、ほんとなんというか。とりあえず渡しておこうかなー、とか思ってみたりしてるわけでして」
そんな顔を真っ赤にして弁解されても。
「ごめんなさい、さっきの質問は聞かなかったことにしてください」
「わ、分かりました」
お互い沈黙。

「で、その。エステルさんは誰かにあげるつもりなんですか?」
遠山さんが控えめに聞いてきた。
私は言葉に困る。朝霧さんに渡すつもりで街に出てきたとはさすがに言えない。
「いえ、特に誰かに差し上げるとかそういうことは……」
頬に手を当てて、目を逸らす。
神よ、嘘をつくなどという愚行をお許し下さい。
「そ、そうですよね」
しかしとっさの答えが、ある程度は理にかなった答えになっていた。
「エステルさんが朝霧君にあげる、とか言ったら私も困っちゃうな~、なんて思いまして」
と、話があらぬ方向に繋がっていく。
「せっかく留学の話を断って満弦ヶ崎に残るんだから、その役得を奪われたくないなぁ」
何事がぶつぶつ呟いている遠山さん。聞き取れはしたものの、あまり意味は分からない。

「仮に私が朝霧さんにチョコを差し上げるとして、何か問題でもあるのですか?」
悩んでいるようだったので、私はひとまず仮定の話を切り出した。
確かに好意的に思っている朝霧さんだが、特別な関係とかそういうことはない。
「んー、そこなんですよねぇ」
遠山さんが難しい顔をした。
「面と向かって義理です、って言えないじゃないですか」
「そうなのですか?」
「まぁ人それぞれでしょうけど」
「何か不都合でもあるのですか?」
遠山さんが難しい顔をしながら紅茶を一口含んだ。
「なんていうか、朝霧君が勘違いしたらどうしようとか」
「勘違い?」
「ですから、面と向かって義理といえない以上、もらった相手も『もしかしたら』とか
思っちゃうかも知れないってことです」
それもそうだ、前もって義理と分かっていなければ相手は本命か義理かは分からない。
義理のつもりで渡したのに、本命だと勘違いされてしまったら。
「む、難しいですね」

この後もしばらく遠山さんとバレンタインについて話す私だった。


~あとがき2~
もう1回くらいで終わらせたいなーなんて思ってますけど。
あ、そういえば明日は翠の誕生日じゃん。
にほんブログ村 ゲームブログ PCゲームへ

|

« 夢色学園生徒会実践記 ~すももラッシュ~ | トップページ | 夜明け前より瑠璃色なSS 左門 de アルバイト »

二次創作」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 夢色学園生徒会実践記 ~すももラッシュ~ | トップページ | 夜明け前より瑠璃色なSS 左門 de アルバイト »