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2007年3月12日 (月)

夜明け前より瑠璃色な SS 左門 de アルバイト

~リース編~

※上から少しずつスクロールしながら読んでいくと
 よりお楽しみいただけるかもしれません。


「席、あっち」
無表情のまま空いている客席を指差してリース。
って待て!その接客は問題あるだろ!

今日はリースが左門で体験アルバイトをしていた。
事の発端は性懲りもなく仁さん。
「リースちゃん、うちで仕事してみない?」
仁さん、直球勝負です。
「やだ」
リース、真芯でとらえてセンターバックスクリーンへ一直線。
打ち返された仁さん、何事もなかったかのように説明を続ける。
「リースちゃんがうちの制服を着たら似合うだろうなぁ、って思ってさ」
過去同様に、リース用にカスタマイズされた制服を取り出す仁さん。
しかし、リースはまだ子供だ。いくらなんでもウェイトレスの仕事は荷が重い。
「仁さん、リースはまだ子供ですし。家族ってわけじゃないから労働基準法に」
そんなのは建前なのだが、さすがにリースには難しいと踏んでいる。
「それは大丈夫。ワタシ18歳以上」
さりげなくリースが反論する。
「いや、そう言われてもな」
倫理上、そうなっているもののそれが本当かどうか非常に怪しい。
まぁその辺は大人の事情だ。

「まぁそんな細かいことはいいじゃないか。リースちゃんもうちで仕事すれば
美味しい料理も食べ放題だよ」
俺の言葉なんかお構いなしに続ける仁さん。
「……」
しかし美味しい料理にぴくりと反応するリース。
しめた、と言わんばかりに仁さんは畳み掛ける。
「僕の試作デザートを毎日でもご馳走するし」
「やっぱやめる」
逆効果だったようだ。

そんな経緯があったものの、リースは結局1日だけウェイトレスをすることになった。


さて、リースがウェイトレスとして本当に役に立っているか、と聞かれると
はなはだ疑問である。
テーブル席から顔が出る程度の身長しかないリースは料理を運べない。
一応、水を運んでもらったりしているのだが、お客さんの前まで持っていって
お客さんに取ってもらっている。
ポットを持たせても注ぐことが出来ないからお客さんに任せている。
半分はセルフサービスになっているのが現状だ。
ただ、その幼い容姿もあいまってマスコット的なポジションは確立しているようだ。
お客さんがリースの頭を撫でたりする。
まぁ本人はあまり良く思っていないようだが。

「リース、笑顔笑顔」
「絶対無理」
硬い表情が取れないリースにそう言ってみるものの、軽く一蹴されてしまった。
リースに作り笑顔なんて難しい注文か。
別に苦情があるわけじゃないしな、このままでもいいか。

夕食時を迎え、店内がにわかに混み始めた時、リースが俺のズボンを引っ張った。
「タツヤ、これ」
リースが手にしていたのは懐中時計のようなもの。
「どうした?誰かの忘れ物か?」
「うん、向こうの席に置きっぱなしだった」
向こうの席っていうと……あ、さっき俺がレジを打った人だ。
スーツを着た年配の会社員の人だった。
「悪い、リース。その人探してくるから仁さんにそう伝えといて」
「待って」
駆け出そうとした俺のズボンをリースは話さなかった。
「ワタシも覚えてるから、ワタシが行く」
「いや、でも」
「ワタシが行った方が効率がいい。あまり役に立ってないから」
自分が戦力になっていない事を自覚しているリース。
これ以上、フロアに立たせるのは酷なんじゃないだろうか。
恨みますよ、仁さん。
「わかった、それはリースに任せるぞ」
「うん」
リースは時計を手に持ち店を出た。
よし。俺も仕事、頑張らないとな。


30分ほど経って気が付いた。まだリースが戻ってきていない。
何かあったのではないだろうか、と心配になってくる。
「…………」
よく考えてみればあんな小さな女の子を夜に外に出したんだぞ。
何をやってるんだ、俺は!

「菜月!リースがまだ戻らないから探してくる!」
俺はそのまま店を飛び出した。


店を出ると辺りを見回した。どっちに行った?
むやみに走り回ったところでリースが見つかる保証はない。
人の気配は……ん?
『ぅぅぅ………』
うちの庭が騒がしい。何か呻くような声や荒い息遣いが聞こえてくる。
最悪の事態が頭をよぎった。

ま、まさか!冗談じゃねえ!

俺はすぐさま、自分の家の庭に駆け込んだ。
「リース!!!」












「お前たち、反省!」
俺が怒っているのが理解できているのだろう。
イタリアンズはお座りをしたままじっとしていた。
「ご、ごめんな。リース」
俺は謝りながらリースの服に付いた汚れを払っていた。
「別に」
リースはぶっきらぼうに答えた。
「色々な偶然が重なっただけ。タツヤのせいじゃない」
『偶然』、とても都合のいい言葉だと思う。
姉さんは仕事だし、麻衣も今日は部活で帰りが遅い。
だから、うちの庭で何かあっても気付く人はいなかった。
そしてリースに懐いている猫がうちの庭に駆け込んだ。
猫を追ってリースも庭に向かうと、イタリアンズが手厚い出迎え。
そんないくつかの偶然が今回の結果を招いていた。
「だから気にしないで」
リースは俺の目を見てそう言った。
そこまで言われちゃ、俺も何も言う必要はない。
俺は頷くことで返事を返した。

と、肝心な事を聞くのを忘れていた。
「そういえば時計は渡せたのか?」
「うん、すぐに見つかったから。とても感謝された」
「そっか、良かったな」
俺はリースの頭を撫でる。
「うん……」
うつむきがちだが、しっかりと頷くのが見えた。
「よし、じゃぁ残りの時間も頑張ろうな」
「ん」
俺はリースの手を引くと、左門に戻った。



~あとがき~
イタリアンズでオチでした。
オチに気付いた人、さすがです。
イケナイ想像をしてしまった人、礼拝堂で懺悔なさい。

あまり喋らないし仕事もすることがないリースをどう動かすのか悩みましたね。
リースだけ、お話の終わり方がちょっと違います。これはこれで良し。

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