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2007年3月 6日 (火)

夜明け前より瑠璃色な SS 左門 de アルバイト

~さやか編~

「いらっしゃいませ」
落ち着いていて、どこかゆったりした声が店内に響く。

今日は姉さんが左門でアルバイトをしていた。
事の発端は菜月が風邪で寝込んでしまったこと。
「さやちゃん、今日はうちの上得意さんが来店するんだ、菜月が倒れてて
人手が足りないんだよ」
姉さんにそう頼み込む仁さん。
季節の変わり目に風邪を引いて寝込んでしまった菜月。
俺が二人分頑張れば問題ないのだが、予約客と一般客を同時に見るのは
至難の業である。
そのため、今日が休日だった姉さんに白羽の矢が立ったというワケだ。
先日『次はさやちゃんに』と話していた仁さんだが、それが冗談ではなくなるくらい
切迫している状況らしい。
「仕方ないわねぇ」
困った顔をしながらも姉さんは承諾した。それがつい昨日の話。

姉さんがまだ学生の頃から一緒に暮らしているが、姉さんがアルバイトを
していたという話は聞いたことがない。
今は就職しているが、明らかに接客的な仕事ではないはずだ。
姉さんがどれだけの戦力になるかは未知数だった。

しかしそれも杞憂に終わる。

姉さんは予約客を中心に見ることになった。
仁さんが『上得意』と言うほど、世間的に言うところのお偉いさん方。
しかし、どうやら姉さんとその人たちが顔見知りだったようだ。
世間ってそんなに広くないんだなぁ、と感心してしまう。

それ以上に姉さんの働きぶりもたいしたものだった。

気が付いたら覚えていた、という店のメニュー。
注文を間違えることもないし、配膳のスピードも速い。
俺が慣れるまでしばらく時間がかかっていたことを姉さんはいとも簡単に
やりとげている。資質の違いを思い知った気がした。
「達哉君、フロアの方は大丈夫?」
しまいには一般客の方にも気を回す余裕まで出来ている。
「うん、こっちは大丈夫。向こうは?」
「次の料理まで少し時間が空くから、飲み物だけ気をつければ良いわね」
仕事を始めて数時間で俺と変わらないレベルになっている姉さん。
俺は率直な疑問をぶつけてみた。
「姉さん、こういう仕事やったことあるの?」
「ううん、特にないけど」
姉さんは首を振って否定する。しかし続けて
「そうね、お偉いさんと食事を一緒にする機会が多かったかしら」
役職上、国の重役の人たちと同席することが多い姉さん。
いわゆる気配りと呼ばれるものを徹底的に鍛えられたそうだ。

「それと料理を運ぶコツを知っているからかしらね」
そういえば姉さんの料理は主に大皿にまとめて盛り付ける料理が多い。
必然的にその重量も重くなるわけだ。
それでもいつも軽々と運んでいる気がする。
何かコツがあるのだろうか。
「そういうコツみたいのがあったら教えて欲しいんだけど」
「えぇ、そうね」
俺は姉さんにどうやったら負担を軽くして運べるかとか、飲み物を揺らさずに
運べるかとかの薀蓄を聞くことになった。
姉さん、ウェイトレス業も十分にこなせそうですね。
そんな話の中で思わぬ発言が飛び出した。
「胸が邪魔になることもあるんだけど、達哉君は男の子だから問題ないわね」
「そ、そりゃ……まぁ」
いきなりそんな事を言われて、返答に困る俺。
大人の魅力を十分に兼ね備えた姉さんの胸元に視線が……。
今まで気にしなかったのに、ちょっと胸元が強調されているウェイトレス服が
気になってしまうじゃないか!

「さやちゃんスタイルいいからね~」
「仁君、セクハラです。弁護士呼びましょうか?」
姉さん、切り返し早っ!
「HAHAHA、やだなぁ、冗談に決まってるじゃないか~」
「冗談でも相手が不快に感じた時点でセクハラよ、もう」
姉さんはため息をつくと俺に向き直る。
「達哉君はああいう大人になっちゃダメですからね」
「うん、もちろん」
俺が頷くと、姉さんはいつものように俺の頭を撫でた。
うわ、左門でこれをやられるといつも以上に恥ずかしいな。
「それはそれで酷いなぁ」
仁さんが座り込んで床に『の』の字を書いていた。
「さ、閉店までもう少しね。お仕事お仕事」
そんな仁さんを放って置いて、俺と姉さんは仕事を再開した。


「ありがとうございました。またお越し下さい」
予約客の最後のお客さんを送り出して『Closed』の札を下げる。
今日の営業が終了した。

「姉さん、お疲れ様」
「うん、達哉君もお疲れ様」
予約席の後片付けを終え、今は夕食を待っているところ。
もうすぐ麻衣やフィーナたちも来るだろう。
「姉さんが接客業できるなんて本当に驚いたよ」
「あら、私を甘く見てたの?」
「やぁ、さやちゃん。今日はお疲れ様」
俺たちの会話に思い切り割り込んでくる仁さん。
今回も相変わらずだな。
「仁君もお疲れ様。菜月ちゃんの具合はどう?」
「あぁ、あの愚妹なら全然平気だって。だいたい38度の熱で倒れるなんて」

ぶわっ。

「!?」
なぜか背筋が凍る思いがした。例えるならそれは殺気。
俺たちのすぐ後ろで何者かが強烈な殺気を放っている。
恐る恐る振り向くと
「兄さんも38度の熱で仕事してみる?」
パジャマ姿の菜月が現れた。
「菜月ちゃん、寝てなくて大丈夫なの?」
「はい、だいぶ良くなりましたから」
心配そうな姉さんに笑顔で返す菜月。
菜月の手にはしっかりしゃもじが握られていた。
その姿を見て、あぁ大丈夫そうだな、と思った。

「さて兄さん。ちょっと私とお話しない?」
威嚇するように仁さんに迫る菜月。
「僕は話すことなんてないよ」
仁さんはすでに逃げ腰だ。
「いいから、こっちに、くる!」
「いててて!み、耳を引っ張るなぁ!」
さしもの仁さんも菜月の前では形無しだな。いつものことだが。
「それじゃテーブルを移動しましょうか。今日はおじさんが奮発してくれるって」
「う、うん」
嬉しそうに話す姉さんの言葉に俺は頷いた。


姉さんの仕事ぶりをみて感じずにいられなかった。
俺ももっと頑張らないとな。



~あとがき~
ということで、さやか編をお送りしました。
3月6日にあわせたかったんで、一気に公開しています(笑)
今後は少しペースを落とすかも。

俺もさやかさんに撫でて欲しいなぁ。

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