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2007年2月15日 (木)

夜明け前より瑠璃色な バレンタインSS

公開を2月15日にしたのは意味があります。

本編を読めばその辺は理解していただけるかと。

学院から帰ってきて、のんびりリビングで過ごしているとインターホンが鳴った。
「郵便でーす」
「はーい」
配達員さんから荷物を受け取ってリビングに戻る。
どれどれっと、受取人は俺じゃないか。
『朝霧達哉様』
配達伝票には達筆な文字で俺の名前が書かれてた。
綺麗な字だけど、見たことあるような……と差出人欄に目をやる。
『From フィーナ・F・E』
どうりで見たことあるはずだ。
久しぶりに見る、フィーナ直筆の文字にちょっと感動してしまった。
俺宛だから、俺があけても良いんだよな?
リビングで開けるのも気が引けて、俺はその箱を持って部屋に戻った。

箱を開けるとそこには赤い包装紙で丁寧にラッピングされた箱に手紙が添えられていた。
今日は2月15日。1日遅れだが、バレンタインチョコであることに気付くのに時間は必要なかった。
早速手紙を読んでみる。


拝啓 朝霧達哉様

暦の上では春とはいえまだ寒い日が続いていると思いますがいかがお過ごしでしょうか?

このたび、地球の風習にあわせてバレンタインチョコを送ってみることにしました。

カレンがあまりよい顔をしませんでしたが、ミアと一緒に手作りのチョコレートを作ってみました。

中略


「そっか、手作りなんだ」
俺はその箱を通じてフィーナを想う。なんか開けるのがもったいない気がしてきた。
でも生ものだしな、感想も聞かせて欲しいって書いてあるし。
俺は早速箱を開けてみることにした。
「ほぉ」
俺はコメントに困る。何の事は無い、普通のチョコレートなのだ。

ハート型であることを除けば。

「これは……照れるな」
カレンさんが良い顔をしなかったのは、この形も含めてってことか。
真ん中から真っ二つに割るのもどうかと思い、端の方を割って口に運ぶ。
「甘い」
そういえばフィーナは結構甘党だったな。
俺のことを考えて作ったと書いてあるが、めちゃめちゃフィーナ仕様だった。


俺は早速、机に向かいペンを取る。
チョコの感想は…素直に甘かったと書いておこう。
感謝の言葉とチョコの感想などを書いた手紙を書き終え、封筒に入れる。
あて先……えっと、月の姫に手紙を出すにはどうしたらいいんだ?
月にも住所はあるだろうが、もちろんそんなのを知るはずもなく。
っと、ダンボールの差出人の所を見ればいいのか。
さっき片付けたダンボールからフィーナの住所を調べる。

『月王国 中央都市 1丁目1番地』

うわ、月っていっても普通の住所なんだな。
たしか王城があるはずなのに、すごく庶民的な住所だ。
……当たり前か。
そういえば、月宛ての郵便物はどこから出せばいいのだろう?
考えてみれば今回のように何かを送ってもらったのは初めてである。
んー、月との国交とかに詳しい姉さんに聞くのが一番早いか。
俺は外出着に着替え家を出た。


ほどなくして、王立博物館。
顔なじみの受付のお姉さんに事情を話し、姉さんに取り次いでもらう。
館長質へ通る許可をもらって部屋に向かった。
「いらっしゃい達哉君。どうかしたの?」
机で事務作業をしていた姉さんが顔を上げてこちらを見ていた。
「ごめん、忙しかった?」
「ううん、大丈夫よ。私もひと休みしようかな」
仕事の手を止めて立ち上がると、ぐーっと伸びをする姉さん。
「お茶淹れるから座って待ってて」
「うん」
姉さんに勧められ、来客用のソファに座る。

「それで、今日はどうしたの?」
ティーセットを手にした姉さんが俺の対面に座った。
「うん、フィーナ宛てに手紙を出したいんだけど、どうしたら良いか、って聞きたくて」
俺はかいつまんで事情を話した。
「月への郵便物は居住区内にある郵便局から出せるんだけど、フィーナ様宛てだとね……」
「やっぱりマズい?」
姉さんは難しい顔をした。
「えぇ、月人にとって王族は神に近い存在ですから。地球の一般人が気安く手紙とかを
出して良いような存在ではないのよ」
その辺はエステルさんの態度を見ているから、ある程度は理解していた。
「でもフィーナは自分の名前で送ってきてたよ?」
「え?」
姉さんが固まった。そして困ったように苦笑する。
「もう、フィーナ様ったら」
「な、なんかマズいの?」
「王城には色々な部署があって、郵便物を取り扱う部署もあるのだけどね。
基本的にはそこで一括管理されているはずなんだけど……」
王城の運営システムを簡単に説明してもらう。
端的にいうと日本でいう省庁がすべて集約され管理している、といった感じだ。
「そうすると、差出人が自分に出来ないから個人的に出してきたのかしら」
直接俺に送ってきたわけだし、そういうこともあるかと思う。
笑顔で威圧するフィーナと、困る郵便局員さんの図が頭に浮かんだ。
フィーナらしい、と言えばらしいか。

「こっちからだと、直接フィーナには出せないのかな?」
「ええ、難しいと思う。場合によっては検閲所ではじかれるかもしれないわ。
もしはじかれなかったとしても、中を見られてしまう可能性も」
それはさすがに避けたいところだなぁ。
やはり特別なコネクションが必要なのだろうか。
「良かったら、私が重要機密書類扱いで直接フィーナ様に送ってあげるけど。
館長代理から館長への業務連絡、ということで」
しかしその特別なコネクションの存在が目の前にあった。
なんかものものしい雰囲気だな、重要機密書類って。
「あとはカレンに任せて手渡してもらう、っていうのもあるけど。年度末が近いから
カレンはここのところ頻繁に月と地球を行き来しているし」
それも悪くないと思ったが、やはり姉さんに頼むのが一番かと思った。
「じゃぁその重要機密書類扱い、ってことで」
「えぇ、分かったわ。手紙は持ってきてる?」
「うん」
バッグから手紙を取り出して姉さんに渡す。
「今日の連絡船はもうないから、明日の朝の便で送ってもらうわね。だから明日の
夕方にはフィーナ様の手元に届くはずよ」
「うん、よろしく」
姉さんに手紙を託して博物館を後にした。

博物館を出て月人居住区を歩く。居住区内にいる人を見ていつも思う。
ほんと、地球人となんら変わりないよなぁ、って。
と、居住区にあるお店の数件に「White Day」と書かれたポスターが貼ってあるのを見つけた。
そうか、俺もフィーナにお返ししなくちゃいけないんだな。
あれ?でも月にはバレンタインの習慣ってないんだよな?
ちょっとした矛盾を気にかけながら、お返しは何が良いか考えた。
そういえば、日曜礼拝に付き合ったとき、フィーナが良く寄っていた店があったはず。
俺はその店に足を運ぶことにした。

何がいいだろう。
しばらく店内を見回っていると、ふと一つのティーカップセットが気になった。
「これ、フィーナが欲しがってたな」
量産品なのか、高額なだけに買い手がつかなかっただけなのかは分からないが
以前この店に来たときにフィーナが目に留めた品である。
が、値札を見て思いとどまったことのあるのでもあった。
だって、こんな小さなカップとソーサーのセットで5桁するんだぜ?
俺もフィーナも持ち合わせがなく、その後フィーナを連れてこの辺を歩くことが
なくなっていたので、すっかり忘れていた。

これにするか。
ちと高い買い物だが、それに見合うだけのことをフィーナはしてくれた。
善は急げということで俺は購入を決め、ティーカップセットを包んでもらった。
まだホワイトデーまで日はあるが、これが売切れてしまっては元も子もない。
それと、こっちから送るときは3月14日に届くように配慮しよう。
その時はまた姉さんに重要機密ナントカで送ってもらわなくちゃな。

フィーナ、喜んでくれるといいな。



~あとがき~
本当は寄った店で紅茶の葉を買ってるエステルさんと鉢合せする予定でした。
ちと、風邪を引いてあまり執筆がはかどらなかったので、適当に折り合いを
つけて締めさせていただきました。

王城の住所がなんか良い感じ(笑)

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