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2006年11月 7日 (火)

D.C.Ⅱ SS

こんな雨の日なら俺も怒らない。
杏とまったり過ごすSS。

先にオンライン初音島に掲載していたものの再掲です。
これはG's用に送った作品。
1996文字と制限に挑戦状を叩きつけるつもりで、めいっぱい詰め込みました。




愛々傘

「さすがにこれじゃ帰れないな」
俺は恨めしげに空を見上げる。どんよりした、分厚い雲が一帯を覆っていた。
放課後になってすぐに降り始めた雨は今、本降りになり始めていた。
突然の雨で購買の傘も売り切れ。
コンビニまでひとっ走りしようにも、ずぶ濡れになりそうな雨に俺は昇降口で途方にくれていた。

「義之?」
ちょうどそのタイミングで後ろから声をかけられる。
振り向くと、そこに杏が立っていた。
「杏。今帰りか?」
「えぇ、部活の顧問が急用で来れないからって。だから休みになったの」
一言二言交わした後、天気の話になる。
「雨、結構降ってきたぞ」
「折り畳み傘があるし。問題ないわ」
杏はカバンから取り出した傘を俺に見せると、靴を履き替える。
そして俺の方を振り向くと、
「義之は帰らないの?」
「帰りたいのはやまやまなんだが、傘がなくてな」
「そう、それは気の毒ね」
「あぁ。気の毒なんだ、俺」
わざとらしく、被害者っぽい態度を取ってみる俺。
「……それじゃね。また明日」
そんな俺を無視して立ち去ろうとする杏。おーい。
ここで杏と別れたら、雨がやむまで待たなきゃならん。
「そこのコンビニまでで良いんで、ご一緒させてください。杏さま」
「最初からそう言えばいいのに。いいわ、付き合ってあげる」
俺が頼む事を予想していたのか、杏はまだ広げていない傘を俺に差し出した。


俺と杏では身長差があるので、傘を持つのはもちろん俺である。
折り畳みだけあって、そのサイズは大きいとはいえない。
杏だけならぴったり収まりそうだが、俺が加わるとそうもいかなかった。
俺はなるべく杏に雨がかからないよう、気をつけて歩く。
「義之、あんまり傘さしてる意味がないかも」
「悪い。雨で濡れたか?」
「私じゃなくて義之のほう」
杏に言われて気付いたのだが、俺の肩はびしょ濡れだったりする。
自分の顔と頭が濡れていないので気にならなかった。
確かに、これでは雨の中を走って帰ったのと大差ない。
「もう少し傘をそっちに傾けても良いわよ」
「いや、間借りしてる立場だしな。杏優先だ」
「……じゃぁ私がもっと近付くから」
そういって杏は俺の腕を抱え込むようにして抱きついてきた。
柔らかな杏の身体が直に感じられる。
クラスメートの大胆な行動に、俺は戸惑ってしまう。
「そ、その……杏さん?」
「これなら少しは違うでしょ?」
しかし、まったく表情が変わらない杏を見ると気恥ずかしさも少し落ち着いた。
そうだな、杏も変な意味でこうしてる訳じゃないのだろう。
雨に濡れないようにお互いを気遣ってるだけ。
ただ、それはそれで少し残念な気がした。


時間にしてわずか5分程だろうか、あっという間に目的地のコンビニに到着。
非常に名残惜しいがここまでか。
と、そこで見知った顔に見つかった。
「あ~!義之君だ」
コンビニからちょうどななかと小恋が出てくる所だった。
ななかは俺と杏を見るや、
「わ、なんかラブラブっぽいですよ。奥さん」
「うぇ?わ、私に振られても」
「小恋、ノリ悪~い」
突然の事で何も出来ない小恋に、ふて腐れるななか。
いや、小恋にアドリブを期待するのは間違いだろ。
という感じで世間話が始まる。
「義之君、傘持ってなかったんだね」
「あぁ、夜から降るって言ってたから油断した」
「でも何で杏と一緒なの?」
「昇降口のところで会ってさ。コンビニまででいいからって頼んだ」
「『ご一緒させてください。杏さま』って言うから、仕方なく」
「う゛……」
言葉通りの事を言っただけに反論できない。
「それにしたってくっつきすぎだよね。ねー、小恋?」
「う、うん。うらやま……じゃなくて、なんか、もうちょっと離れた方が……」
「仕方ないでしょ。こうでもしないと、二人とも濡れちゃうもの」
やっぱり杏は濡れないために、と割り切っているようだった。
でも、それなら何でさっさとコンビニに入らないのだろう。
未だ俺と杏はコンビニの軒先にすら入っていない。
「まぁいいや。私も馬に蹴られたくないしね。小恋、行こう」
「え?うん。義之、杏、また明日ね」
「義之君、雪村さん、ばいば~い」
騒ぐだけ騒いでななかと小恋は帰って行った。
「っと傘だ、傘」
本来の『傘を買いに行く』という目的を忘れるところだった。
俺はコンビニに入ろうとする。
が、俺の腕を取っている杏が動こうとしない。
「おい、杏。動けないんだが」
「せっかくだから義之の家まで付き合ってあげるわ」
杏は俺の顔を見ずに、そんな事を呟いた。
無駄な出費がなくなる分、俺としては大助かりなんだが。
「バス停と逆方向だぞ?いいのか?」
「たまには良いんじゃないかしら。小恋も見逃してくれたことだし」
最後の方はよく聞き取れなかったが、杏はどうやら付き合ってくれる気らしい。
それなら、断る理由もないよな。
「じゃ、お願いするよ」
「了解」

ここへ来る道と同じように、俺と杏は寄り添いながら帰った。
杏がいつもより楽しそうに見えたのは俺の自惚れだろうか。





~あとがき~
杏と愛々傘もとい相合傘をやりたかったので書きました。
本編と照らし合わせると、ななかと知り合った後→杏に告白される前という
短い期間に発生しそうなシチュエーションです。
でも、この期間は真冬だったような・・・。風邪引くよ?

たまには傘を持たずに学校に行ってみよう!

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