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2006年5月 9日 (火)

夜明け前より瑠璃色な 人気投票実況SS

第十二回。

「ねぇ、さやか。私ってそんなに魅力ないかしら…?」
頬を真っ赤にして、目がとろんとしている、明らかな酔っ払い。
いつも冷静なカレンからは想像できない。
「そんなことないわよ。カレンだってまだまだ若いんだから」
カレン程ではないにしろ、やや頬が赤くなっているさやか。
こちらはまだまだ余裕がありそうだ。
「もう、同い年でしょ」
グラスのウイスキーを一気にあおると、カレンはグラスを叩き付けた。
満弦ヶ崎連絡港市のやや外れにある一軒の居酒屋。
そこでさやかとカレンが酒を飲んでいた。
話題はもちろん、先日まで開催されていた人気投票である。
その結果が先日、ついに公開されていた。
カレンの結果は散々。一度だけ翠を抜いたことがあったが以降は壊滅。
票は低空飛行のまま伸び悩み、結局最下位で終了した。
一方のさやかも、誕生日に大量の票を獲得したものの、やはり一時的な
ものに過ぎず、結果ミアに再逆転され6位に落ち着いた。
人気投票には副賞があり、各自に見合った副賞をライオネス国王の
独断と偏見、もしくは個人の申し出で支給していた。
カレンに与えられた副賞は、月人居住区にある居酒屋のフリーパス。
さすがに国王に対して物品を要求するほどカレンも偉くはない。
粋な計らいか、ただのお茶目か、なかなか面白い副賞を用意したものである。
なお、さやかに支給されたのは王立図書館館長室の備品などである。
空気清浄機、フットマッサージャーなど事務職にあって損はない代物である。
「いいわ、私もう仕事一筋で生きる」
すでに仕事一筋だろう、突っ込もうとしたさやかだがわざわざ絡む必要もない。
黙って頷いた。
「えぇ、私も付き合うから。これからもよろしくね」
お姉さんズの仲はより一層深まった。
余談だが、さやかの副賞には個人的な申し出により『ぽてりこ1年分』が
含まれていた事を追記しておく。


「姫さま、お疲れ様でした」
「えぇ、ミアもね」
月へ帰ってきたフィーナとミア。
ミアには高級茶葉とティーポットのセットが与えられていた。
今はそのセットでフィーナの部屋でお茶を飲んでいる。
窓の外は昼間だというのに暗い。ちょうど夜の周期なのだ。
「地球なら今ごろは青空でしょうね」
暗い窓の外を見ながら、寂しげに話すフィーナ。
「人気投票の優勝商品は地球での永住権とかが良かったわね」
しみじみ話す。しかしそれは叶わぬ夢。
「姫さまと達哉さんがご結婚なされば」
「もう、何を言うの。ミア」
やや頬を赤くするフィーナ。
「あ…す、すいません」
深い意味を持って発言したわけではなかったのだろう、ミアは慌てた。
「でも、もしそうなったとしてもダメでしょうね」
「どうしてですか?」
「そうしたら、達哉はスフィア王国の国王よ。地球には住めないわ」
「そうでした。残念です」
どんな形であっても月を離れることは許されないフィーナ。
「私に姉妹でもいれば別なのでしょうけど」
「その手がありました」
ぽんっ、っと両手をあわせるミア。何か思いついたようだ。
「何か良い案でもあるの、ミア?」
「はい、国王様に再婚して頂いて、その方に…ひ、姫さま!?」
言葉の途中でフィーナの変化を感じ取ったミア。
温厚なフィーナが怒りに震えていた。
「ミア、冗談でもそういうことを言うのは許されないわ」
「も、申し訳ありません!お、お許しを」
自分の発言の無責任さに気付いたミアは慌てて頭を下げる。
フィーナもミアの言葉に悪気がないことは分かっている。
しかし、さすがに今の発言は許せなかった。
「もういいわ、ミア。頭を上げて」
「も、申し訳ありませんでした」
月の姫として生まれたフィーナには、その身分を一生背負っていかなければならない。
「ミア、紅茶が冷めてしまったわ。新しいのを用意してくれる?」
「は、はい!ただいま」
ミアはいつも以上のスピードで部屋を出て行った。


フィーナは窓際まで足を運ぶと、大きな窓を開け夜空を見上げた。
そこには青く輝く地球が見える。
「優勝商品は『普通の女の娘になりたい』なんて言ったら怒るかしら」
遠く離れた異国にいる青年の顔を思い浮かべ、フィーナは思いを馳せた。
残念ながら主催者の娘という立場上、彼女に副賞は渡されていない。


カランカラン。
「いらっしゃいませ~。っとリースちゃんか」
左門でウェイターの仕事中だった仁が迎え入れたお客はリース。
たまに顔を出しては左門の料理を批評している。
「ここのご飯は高いよ~」
茶化すように仁。いつものことだからリースも気にしていない。
と、リースは懐から何かを取り出していた。
「…足りる?」
「ん?なんだい?」
リースが取り出したのは、不自然に厚みのある封筒。
表には『4位・7位』と書いてある。
「あぁ、人気投票でお食事券でも貰ったのか」
不躾ではあるが、中身を確認する仁。
一応、客商売なのだからという名目だ。
「分厚いけど、まさかね」
しかし仁は侮っていた。
3cmはある厚みの分だけ、ぎっしりと詰っている諭吉さん。
固まってしまった仁。リースは補足するように呟く。
「フィアッカが貰っておけ、って言ってたから」
「そ、そーですか」
開いた封筒を丁寧に閉じて返すと、仁はおぼつかない足取りでリースを
席に案内する。
「俺の貯金と同じくらいあるじゃん」
仁は泣きながら厨房へ戻っていった。
「???」
席に案内されたリースは首をかしげていたが、すぐにメニューに目をやった。
なお、リースはもちろん顔パスなので代金は払っていない。


「やっと片付いたぁ…」
両手をぱんぱんと叩き、満足げな表情の菜月。
この春から大学近くのアパートで一人暮らしを始めるので実家の荷物を
まとめていて、それがやっと片付いたのだった。
「……」
だいぶスッキリしてしまった自分の部屋を見て、感慨にふける。
この部屋で十数年過ごしてきたのだ、それも無理はないだろう。
「ま、帰ってこようと思えばすぐに帰って来れるしね」
自分に言い聞かせるように菜月。
下宿先のアパートにはすでに多くの荷物が送られている。
その中には、人気投票3位の副賞だった、家電用品各種も含まれていた。
「さて、店の手伝いでもしようかな」
しばらく着ることのなくなるウェイトレス服を手にとり、彼女は何を思うだろう。


「麻衣ってば人気あるのねー」
「だって可愛いもん。当然の結果よね」
吹奏楽部では麻衣がここぞとばかりにいじられていた。
「もう、みんな。そういうこと言わないでよ~」
苦笑する麻衣。
ただでさえ吹奏楽部のマスコット的なポジションにいた麻衣だ。
今回の人気投票はそれに拍車をかける結果になった。
「そういえば、副賞があったんでしょ?何もらったの?」
なぜか副賞の存在を知る吹奏楽部員。侮れない。
「えっと、フルートを貰ったんだよ」
「へぇ、かっこ良いやつ?」
「うん、プラチナ製だって…」
「「プラチナ!?」」
みんなが驚いた。当たり前だ。
さすがに吹奏楽をやっている以上、楽器の値段の想像くらい出来る。
軽く7桁、もしかしたら8桁はする代物である。
「そ…それ使うの?」
「まさか!さすがに使えないよ」
慌てて手を振って否定する麻衣。
「そうだよねぇ」
うんうんと頷く吹奏楽部一同。
現在愛用しているフルートを手にして微笑む麻衣は言う。
「私には、お兄ちゃんとお姉ちゃんに買ってもらったこのフルートがあるから」


「ねぇねぇ朝霧君、明日ひま?」
またしても左門に食事に来ていた翠がバイト中の達哉を捕まえる。
「夕方からバイトがあるけど、それまでなら」
忙しい時間でもなかったので、翠との会話に付き合う達哉。
「じゃぁさ、大学の下見とか行ってみない?」
「構わないけど、この時期で入れるのか?」
大学の授業は基本的に2月末までのはずだ。
「うん、大丈夫みたい」
そう言って翠は1枚の紙を取り出した。満弦ヶ崎大学のパンフレット。
「ここに、見学自由って書いてあるし」
指をさして説明する翠。確かにそう書かれている。
「そっか、じゃぁ行ってみるかな」
翠が受け取った副賞は、満弦ヶ崎大学の月学部の入学資格。
翠はそのクラリネットの腕前から、海外留学の進路も考えていた。
しかし、ギリギリまで考えたことで、満弦ヶ崎大学の募集期間を
過ぎてしまっていた。
悩んだ末、翠が選んだのは海外留学の辞退。
国内の大学なら、達哉の行く満弦ヶ崎以外考えられなかった。
「大学に入ってからもよろしくね、朝霧君」
「おう、こちらこそ」
案外、幸せそうな翠だった。



スタッフロール

1位 フィーナ・ファム・アーシュライト
王女の意地。デッドヒートを制したのはスフィア王国の姫だった。
2日目以降、2位に甘んじていたものの、途中経過が公開されない
7日目から猛追を開始。姫と言う名に恥じない逆転劇で制す。

2位 朝霧麻衣
最後の最後で首位陥落。しかし当の本人は至って気にせず。
むしろ首位に立たなかったことを喜んでいる。
カテリナ学院の吹奏楽部入部希望者が爆発的に増えそうだ。

3位 鷹見沢菜月
左門の看板娘、ここにあり。安定した人気で3位のままゴール。
大学の関係で満弦ヶ崎を離れるので、会うなら今のうちだ。
菜月のウェイトレス服姿をこの目に焼き付けろ。

4位 リースリット・ノエル
話していても黙っていても、飛び切り可愛い…らしい。
その容姿からファンの層は幅広く、受けがよい。
成長したら、きっと美人になる。

5位 ミア・クレメンティス
一家に一台、ドジっ娘メイドはいかがですか?
おろおろあたふた標準装備。でも月の料理はミアにお任せ。
万能ではないけれど、それはそれで全然OKである。

6位 穂積さやか
博物館の来館者が少しではあるが増え、ほくほく顔のさやか。
来館者の目当てはさやかだが、残念ながら館長は基本的に
館長室で事務仕事をしているのだった。

7位 フィアッカ・マルグリッド
リースと一心同体の身でありながら、この位置に滑り込む。
リースよりやや饒舌、ミステリアスな雰囲気が好評とか。
残念ながらフィアッカが現役の時代の資料は一切残されていない。

8位 遠山翠
サブキャラの宿命か、ここまで票が伸びないとは本人も思うまい。
ライバルの菜月に対抗するため、髪型を変えてリベンジを狙う。
そのとき、彼女の真価が発揮されるだろう。

9位 カレン・クラヴィウス
熱狂的なファンは少なくないものの、やはりサブキャラ。
もう少し、彼女が目立つ事があれば違った結果もあったかもしれない。
しかし、きっとそれは彼女は望んでいないだろう。



実はまだ続いていたのでした。で、今回がラストです。
人気投票アフターということで、各自に副賞が与えられました。
もっと早い段階で公開するつもりでしたが、色々ありまして。

コンシューマ版の移植が発表されました。
その時にもう一度、人気投票をしたらきっとまた違う結果になるでしょう。
というか、翠がこの位置だったのが最後まで納得いかない。

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